幸せ

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幸せになるのは良いことだ。それがたとえ自分のことでなくとも。人の喜ぶ顔を見ていると自分にも伝染するものだ。人と喜びを共有できるのはやはり嬉しいものである。ヴィットリオの結婚式は、私がイタリアで初めて出席する教会での結婚式だった。何しろヴィットリオときたら6人兄弟の末っ子で、兄弟姉妹のそれぞれが既に結婚して子供までいるので、彼らの家族親戚だけでも大変な人数である。そして友達。そして花嫁側の参列者。恐らく200人は越えていたのではないだろうか。ボローニャ旧市街の端っこに在る小さな教会は参列者で一杯で、わくわくした空気で満ちていた。私にしてみればこの結婚式は、招待状を受け取ったその日から自分に小さな幸運を運んできたような感がある。ひょっとして集まった人々もまた同様な気持ちだったのかもしれない。彼らにとっては緊張の結婚式が終わると、外で待っていたのは米粒の嵐だった。式を終えたばかりの新郎新婦に米を投げつけて祝う訳だが、私が今まで見てきたどのカップルもこの米の嵐を喜んだためしがなく、案の定この若いカップルもまた米の嵐に見舞われてやれやれといった感じであった。旧市街から郊外の屋敷へ向かった。エミリア街道にある古い屋敷でお披露目会があるのだ。この屋敷と言うのが私が長いこと関心を持ち続けていたVilla Cicognaで、エミリア街道沿いに鉄製の門が備え付けてある。その門から入ると左右に街路樹があり、整備がされているがアスファルトではない通路を車で走ると、ようやくお屋敷に辿り着くと言う具合だ。1500年代に建てられたこの屋敷は恐らくは旧市街に暮らしていた貴族の休暇のための別荘か何かだ。今でこそ車で旧市街から30分の道のりの此処は周囲に住宅もあり全然田舎ではないけれど、当時は旧市街を囲む壁の外は田舎扱いだったそうで、そして旧市街からは馬車での長旅だったに違いない。私はこの建物でのお披露目会を楽しみにしていたのだ。内部はどんな風になっているのかとか、建物に備え付けられている回廊の天井にフレスコ画が施されているのではないかとか、庭には古い噴水があるのだろうかとか、広間にはオリジナルの壁画や絵画があるのではないだろうかとか。兎に角何かきっかけが無くては入ることが出来ない。だから17年も待っていたのだ。回廊にフレスコ画は無かったが、屋敷の中には大きな絵画が幾つもあった。それは私の普段の生活からは想像できぬ大きなもので、驚くばかりであった。驚くほど高い天井、美しい緩いカーブを描くアーチ。分厚い壁、美しい庭。どれも私が見たことの無いものだった。お披露目会は楽しかった。楽しかった理由は花嫁だった。彼女は私が覚えている通りの人で、例えて言えば太陽、例えて言えばひまわり、兎に角明るくて大らかで愛らしい女性だった。ああ、ヴィットリオは良い人と結婚したわね。入れ替わり立ち代り私の前に現れる彼の家族と、私はそんな話しをした。末っ子の彼が結婚と共に新しい生活を始めるべく家を出てしまうことで両親は淋しい思いをするだろう。何しろあの家はたったのふたりには広すぎるから。もともと8人家族と訪れる親戚を受け入れるための大きな家なのだから。いつもよくしてくれたヴィットリオの両親に時々お喋りしに立ち寄ることを約束した。それにしてもイタリアの結婚のお披露目会は長い。噂には聞いていたが南イタリアのことだとばかり思っていたら、どうやらそうとは限らないらしい。18時半に始まり延々とお祝いが続くのだ。友人知人同士がお喋りを楽しみ、知らない同士が挨拶を交わし、シャンパンを幾度もお代わりして、ぞくぞくと運ばれてくる食事を堪能して。しかし夜中になっても終わらない。明日には明日の予定があるのでお先に失礼してきたけれど。結婚式に参加して、お披露目会で様々な人に会って、幸せをちょっぴりお裾分けして貰った。ありがとう。このわくわく感、当分続きそうである。


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コメント

こんにちは。

小さなヴィットリアさんの家は、裕福なのでしょうね。
すごい邸宅に住んでいるのですね。

私の友人のヴィットリアはごく一般的な庶民ですが、幸せは平等なのですね。

両ヴィットリアに幸あれ!!
もちろんyspringmindさんにも!

2012/09/10 (Mon) 08:19 | Via Valdossola #P6wRKz4w | URL | 編集
Re: タイトルなし

Via Valdossolaさん、こんにちは。ヴィットリオの家族の家はアペニン山脈の小さな村にあって、1800年代の一軒家なのです。家を取り囲む山の持ち主で、栗を育てているんです。自家製サラミや生ハムを作り、無農薬野菜を育てる。自給自足が夢で何十年か前にボローニャの町中からこの村に移ってきたのだそうです。確かに裕福、でも友人知人、たった今会った人とも分かち合うことを拒まぬ人たちです。おかげで私もそんな風にして家族のひとりみたいにして良くして貰いました。私が思うに幸せは、お金持ちも庶民も平等に与えられていると思います。例えばVia Valdossolaさんのような偉い人にも私のようなごく普通の人にも。嬉しいことです

2012/09/10 (Mon) 20:44 | yspringmind #- | URL | 編集

こんにちは。

えっえっ、私が「偉い人」とは、有り難いお言葉です。
体重のせいで「重い人」と言われたことはありますが・・・恐縮です。
yspringmindさんの方が、私には「すごい人」に思えます。

2012/09/11 (Tue) 11:01 | Via Valdossola #P6wRKz4w | URL | 編集
Re: タイトルなし

私のほうから見るとやはり偉い人に見えますよ。何しろ私はごく平凡な普通の人なものですから。ま、それもなかなか楽しいですけど。

2012/09/12 (Wed) 22:24 | yspringmind #- | URL | 編集

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