小さなヴィットリオ

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急に涼しくなった。嬉しいような淋しいような。淋しい理由は自分でも良く分からないが、多分こんなことだ。夏が別れも告げずに旅立ってしまったような、楽しかった夏が実は幻だったような。しかし何時の頃からか暑さが苦手になった私は両手ばなしに嬉しいのも本当で、昨晩は涼しい9月を歓迎するために赤ワインを開けて乾杯した。ポルトガルで購入した2本のうちのひとつだ。内陸のアレンテージョ地方のもので、こくがあって深みがあって大好きだ。奮発した甲斐あって美味しく、簡単な夕食が特別な夕食に変身した。ワインは魔法なのである。昨日旧市街で結婚式の集いを幾つも見かけた。そんな様子を眺めながら私は思い出していた。7月初旬のある日、家の郵便受けを覘いてみたら封筒が入っていた。封筒には私と相棒の名前、そして住所が書き込まれていた。しかし切手が張られていなければ、消印もなかった。どうやら送り主が郵便受けに直接入れて行ったらしい。今までもそんなことが幾度かあった。大抵の場合は家の修復の際に頼んだ業者からの請求書の類だった。でもこの封筒は決してその類ではないと直ちに察知したのは、封筒が上質な紙で仕上げられていたから、そしてひと文字ひと文字丁寧に書かれていたからだった。開けてみるとこれまた上質な紙で作られたカードが入っていて、クリーム色の半透明のリボンが施されていた。成る程、これは何かお祝い事らしい。そして書かれている流れるような美しい文字を読みながら、さて、と頭を捻った。結婚式の知らせと招待であることは理解できたが、誰の結婚式なのか分からない。あの人はもう老人だし、あの人は既に結婚しているし。ああ、分からない、分からないと悩んでいるところに相棒が帰ってきたのでそれを見せてみた。すると彼はすぐに分かって言った。ヴィットリオだよ! 彼はそんな年齢になったんだね! それで思い出した。山の友人家族の末っ子だ。しかし彼はまだ結婚するような年齢では・・・と言いかけて、私がイタリアに来て17年が経った分だけ、彼もまた成長していることに想いが至った。ヴィットリオが結婚する! 冬の寒い日でも半ズボンから長細い足をむき出しにして、庭を走り回っていた男の子。はにかみ屋の小学生だった。しっかり者のお姉さんたち、賢くて真面目なお兄さんからは、いつも遊んでばかりいるとかサッカーばかりして勉強をちっともしないなどと言われていたが、私はいつも感心していたのだ、両親の手伝いを進んでする優しくて賢い男の子。私たちが遊びに行くのを一番喜んでくれたのも彼だった。中学生になると背丈が急に伸びて、高校生になると友達やガールフレンドと出掛けるのに忙しくなり、遊びに行っても不在なことが多くなった。それは彼が成長しつつある証拠で、嬉しいことでありながら、家族も私たちも小さな穴が埋めらずに少し淋しくもあったのだ。ああ、彼が結婚するのか。私は家族の一員ではないけれど、いつも家族のように温かく迎えてくれた彼らのことは何か血の繋がらない親戚みたいに感じていた。ヴィットリオは、小さなヴィットリオは私たちの甥っ子みたいな存在だった。8月下旬、彼から電話を貰って会いに行った。社会人になった彼を見て年月の流れを感じた。背丈がぐんと高く、しっかりした体つきも顔つきも彼の父親の若い頃の写真にそっくりだった。結婚相手は、あの頃デートに忙しくていつも不在だった彼の、9年も付き合った女の子だった。知っている。私も山の家で会ったことがある、あの元気で明るい女の子。彼は自分が社会人になるまで求婚するのを待っていたのだというのだから実に彼らしい。そうか、ずっと一緒だったのか、と思ったら、何だか溜まらなく嬉しくなってきた。私たちは結婚式の当日に会うことを約束して別れたのだ。その結婚式まであと一週間。何だか笑いが零れてしまう。彼らを取り囲む私たちを含めた家族友人たちときたら自分の結婚式のようにどきどきわくわくしているのだから。


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コメント

イタリアを旅行したときに何度か結婚式を見ました。
泊まっていた宿に花嫁さんも滞在していて、朝食を食べていたときにウェディングドレスを着て”じゃ~ん!”と現れたこともあります。
砂糖菓子(なんていうのでしたっけ?)をいただきました。
通りすがりの外国人観光客にミラネーゼとシチリアーノの結婚なのよと、色々となれそめを話してくださいました。

自分のはまだですが、人のはいいものですよね。

2012/09/03 (Mon) 02:16 | micio #O/XG6wUc | URL | 編集

こんにちは。

私もなんだかとても嬉しくなりました。
yspringmindさんの気持ちが伝染したのかもしれませんが、私もボローニャにヴィットリオという若い友人がいるので、彼の事と重なってしまったようです。
彼も人懐っこい、素直な好青年なので、暫らくしたら小さなヴィットリオさんみたいに素敵な女性と結婚するのでしょうね。
本当に心がウキウキしますね。

2012/09/03 (Mon) 07:41 | Via Valdossola #P6wRKz4w | URL | 編集

虫の声が きこえない???
昨夜の日本は雷がひどく・・・

今朝 仕事場についたら、小さな小さな 雛のような?蛙のような、
こんな所に?って、思いましたが
雷と大雨のせいだったのか、不思議な生き物が 雨水の中にいました
なんだったのかな~?

2012/09/03 (Mon) 12:31 | 春風 #jgTtIlIo | URL | 編集
Re: タイトルなし

micioさん、真夏の間は全然見かけなかった結婚式。多分夏は結婚式よりも旅行! 休暇! なのかも知れませんね、イタリアは。結婚の当人たちは何しろハイテンションになっているので祝ってくれる人ならば知らない人にも親切です。外国人に対しては特に。私も同じような経験があってとても良い思い出です。砂糖菓子はコンフェッティといいます。あれは美味しいですね。私は普通のときも買ってよく食べるんですよ。
micioさん、人のも良いけど自分のもなかなか良いものですよ。

2012/09/03 (Mon) 22:15 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

Via Valdossolaさん、こんにちは。幸せな話しは第三者も幸せな気分にしてくれますね。自分のことみたいに嬉しくて、このところ毎日うきうきしてます。Via Valdossolaさんのご友人のヴィットリオもそのうち結婚の知らせをしてくるのかもしれませんよ。こういう話はある日突然舞い込むのです。ああ、それにしても急激に気温が下がって22度しかなかったり、雨がこうも強く降ると、困るのですよ。何しろ結婚式に参加する装いが夏物なんですから!今週土曜日は是非とも快晴の温暖な気候になって貰いたいものです。

2012/09/03 (Mon) 22:21 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

春風さん、虫の声は山の中や郊外のそのまた郊外のようなところでないと聞こえないんです。日本だったらちょっとその辺で聞こえるものですけどね。ところで小さな小さな雛のような蛙のような不思議な生き物、何でしょうね。関心があります。

2012/09/03 (Mon) 22:24 | yspringmind #- | URL | 編集

お久しぶりです

夏の休暇から持ち帰った、こくと深みのある赤ワインが
夕食を素敵に変身させてくれたこと 
この箇所を読んで豊かな気持ちになりました

夏をすっかり堪能されたので、秋を迎えるのが愉しみですね

そして17年前の坊やが。。。 
新しい門出のニュースは、自分にも新しく何かが始まるみたいに心が躍りますね
土曜日は、此処はお天気のようです
私も週末に短いお出かけを計画していて気にしていました

どうぞ美しい気持ちのよい日になりますように~*

2012/09/05 (Wed) 21:51 | スプーン #EQkw1b1A | URL | 編集
Re: タイトルなし

スプーンさん、こんにちは。お元気そうですね。休暇から戻って日常の生活の渦に巻き込まれていますが、しかし沢山の思い出を持ち帰った美味しい赤ワインが呼び起こしてくれます。ちょっと素敵ですよね、そういうのも。この夏は夏を120%堪能したので、気分良く、潔く秋を迎えることが出来そうです。これにしてももうすぐヴィットリオの結婚式だなんて信じられません。我が家ではそういう訳で妙にわくわくしているのですよ。スプーンさん、週末のお出かけ、楽しんでくださいね。

2012/09/06 (Thu) 22:30 | yspringmind #- | URL | 編集

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