私たち家族

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5月の第2日曜日。今日は朝から雨が降っている。予想どうりと言えば予想どうり、しかしこんなに冷たい雨だなんて。家の中が妙に暖かかったから、温かい雨が降っているのだろうと思って窓を開けた。すると冷たい空気と雨が吹き込んできて首をすくめた。多分15度もなかった。昨日の暑さは夢だったのだろうか、と思うような冷たさだった。私はいつも思うのだけど、気候までもがイタリア風だ。中間が無い。程々というものが無いのだ。喜怒哀楽が激しいイタリア人と同じだ。イタリアに暮らし始めた頃、相棒にそう言ってみたらそんなことは無いと憤慨していたが、年月が経つにつれてそうであると私は確信するのだ。そして最近別の人に言ってみたら、勿論よ、私たちは感情と共に生きているのだから、と言って、逆にあなたがいつも平然と、淡々としていられるほうが不思議でならない、と返された。私は別に平然とはしていない。たぶん日本人にしてはかなり感情的な人間であると思う。だから常に淡々としているように心がけていると言ってもよかった。どちらにしても彼らが感情と共に生きていることがはっきりして長年の疑問に終止符を打つことが出来た。さて母の日。母が遠くに居ることを毎年この日を迎えるたびに実感する。子供の頃、姉と私にとって母の日は大切な一日であった。もともと私たちは両親の手伝いをするのが好きだった。食事の後片付けの手伝いをしたり、庭の植木に水をくべたり、夏草を引っこ抜いたり、夕方になると近所の豆腐屋に豆腐や油揚げを買いに行ったり。だから母は随分助かっていたのではないかと思うけど、まあ、それは母に訊いてみなければ分からぬことだ。今も覚えている。私たちが東京の小さな庭のついた家に暮らしていた頃のこと。子供の足で家から15分も歩いたところに花屋があった。小さな花屋で間口も狭ければ奥行きも無かった。しかしよい花を置いていて、母は花は此処でなくちゃといつも言っていた。母の日の朝、父と姉との3人で家を出た。母は何の疑問も持っていなかったに違いない。私たち3人は兎に角仲良しで、いつもこんな風に散歩に出掛けていたのだから。私たちが行きたかったのはあの花屋だった。花屋はいつもより客が多くて、そのうち花が売切れてしまうのではないかと心配になったほどだ。ようやく順番が回ってきたところで欲しかったカーネーションは売切れだった。あの当時、母の日といったらカーネーションでなければならない風潮があったのだ。私はとても残念で、それに大変な泣き虫でもあったから、涙がひとつふたつと零れてしまい父や姉を困らせた。すると花屋の奥さんが、それでは特別な花束を作りましょう、とか何とか言って様々な花を引き抜いて大きな美しい花束作ってくれた。それを受け取った私の顔が花束で隠れてしまうような。さっきまで泣いていたことなど忘れて大喜びすると、父と姉と花屋の奥さんが嬉しそうに笑った。花を買った足で直ぐ近くの和菓子屋で何か美味しいものを買って家に帰った。母に花束を渡すととても喜んでくれた。でもカーネーションはもう無かったのだと残念そうに付け加えると、母はこっちの方がずっと嬉しいと言って有難うといったのを覚えている。あの年の母の日を毎年この日を迎えるたびに思い出す。両親はまだ若く、姉と私も無邪気な子供だった。あの後私たちは田舎に引っ越して、住んでいた家はそのうち無くなってしまった。数年前には父が逝ってしまった。長い年月、母から離れて暮らしている私は母の日を迎えるたびに自分の親不孝を実感する。私が元気に頑張っていることが一番の親孝行だと母は言ってくれるけど。今日は遠いボローニャから母に沢山の感謝を贈ろう。


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コメント

あ~ よかった  美しい花束を喜ばれたんですね 
カーネーションが売り切れそうなところからどきどきして読んでいました
仲良しご家族の母の日 愉しい思い出ですね~

子供の頃は小さなお手伝いがありました
お庭で水をくべる ”くべる”という言葉が懐かしいです
ストーブに石炭をくべる北国の夕方を思い出して 
”くべる”は兄しかやってはいけないことでしたが

2012/05/14 (Mon) 18:40 | スプーン #EQkw1b1A | URL | 編集

懐かしくも・・・キュンとするお話ですね


二度と戻れぬ あの日があるのも 幸せなのかしら・・・

日本はお天気が昨日とは打って変わってという表現がよいのでしょうか、
そんな雨です
昨日のお天気は素敵でした
夕日の傾きも夏に近づいているようです

2012/05/15 (Tue) 03:01 | 春風 #jgTtIlIo | URL | 編集
Re: タイトルなし

スプーンさん、こんにちは。カーネーションがどんどん売れていくのを見ながらはらはらどきどきディたのを今でもよく覚えています。私は本当に泣く虫だったので、花が売り切れて涙をこぼして父と姉を大変困らせました。楽しい思い出でありながら胸がきゅーとする思い出でもあります。
ストーブに石炭をくべる北国の夕方の思い出。いいですね。こういうのは今は無くなってしまった情景。何時までも忘れたくない良い思いでですね。

2012/05/19 (Sat) 19:05 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

春風さん、こんにちは。子供の頃のことを思い出すと胸がキュンとなりますね。このキュンは何なのかしら、何故キュンとするのかしら。多分それは戻れぬ私の大切な“あの頃”だからなのかもしれませんね。夕方8時になっても明るく確実に夏に向かっているのを感じますが、しかしどうしてこんなに冷えるのでしょうか。何時まで経ってもジャケットとスカーフが手放せません。冬の終わりに春を待つように、私は初夏を待っているのです。

2012/05/19 (Sat) 19:12 | yspringmind #- | URL | 編集

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