良いもの見つけた

Immagine 031 (Small)


風薫る。5月のことを私は子供の頃からずっとそんな風に思っていた。誰か大人が言った言葉だろうか、それとも家族と一緒に見た映画の中の台詞の一部だったのだろうか。兎に角、薫るという言葉を聞くと直ぐに5月を思うのだ。ボローニャはここ数日晴れ。5月1日の夕方の激しい雨が夢だったのではないかと思うほどの晴天だ。しかし朝夕の風は油断がならず、ボローニャの人々はジャケットを羽織っての外出だ。冷たい風が吹き出すとあっという間に気温が下がる、この辺りに暮らす人々の用心深い習慣である。今日、ボローニャ旧市街を散策した。街は思ったほど混み合っていなかった。この晴天のせいだろう。山や海に休暇用の家を持っている人達は金曜日の夕方からボローニャを脱出しているに違いない。街を歩きながら気がついたのは店先に飾られた軽快な靴だ。私は靴が大好きだから自然と靴屋に目が行くようだ。思えば私がボローニャに来た頃はもっと沢山靴屋があった。アメリカから引っ越してきたばかりの私には、ボローニャの靴屋の多さに驚き、狂喜したものだ。普段は見る専門だったけど、こつこつ溜めた小遣いで新しい季節の素敵な一足を見つけては自分へのご褒美に購入したものだ。ボローニャに暮らし始めた頃の私の収入源はベイビーシッターだった。と言っても相棒の友人の子供を時々見る程度のもので、相棒の友人の、まだイタリア語が良く分からない私が子供と一緒に遊びながら言葉を学べるようにとの好意的な提案だった。私にしてみれば言葉は分からないしベイビーシッターもしたことが無かったので友人の好意的な提案を嬉しいとは思っていなかったが、それにしてもそんな風にして相棒や相棒の家族以外の人達と交流するのはなかなか楽しいことであった。ある日、友人が私の靴を見て感嘆した。それで私は靴が好きだ言うと、友人はまるでよき話し相手を見つけたように喜んだ。友人もまた靴が大好きだった。話をしているうちに私が気に入っているボローニャのあちこちの店は友人の贔屓の店であることが分かった。豊かな家庭の奥さんである友人と少ない貯金を崩しながら質素に生活する私が同じ店を気に入っていることが酷く滑稽に思えたが、友人は、あなた、いい趣味しているわね、と言ってそれから私たちはどんどん仲がよくなった。私たちの付き合いは5年ほど続いた。もし友人がローマに引越しせずにいたら、私たちの付き合いはずっと続いただろう。今はロンドンに暮らしていて、ますます会えない存在になった。夏にはボローニャに帰るから、と先日メールを貰った。私がボローニャにいる時に帰ってくればいいけれど。そんなことを思い出しながらじっとショーウィンドウを睨むようにして眺めていたが、思い立って店に入った。TOD’S という名の私にはなかなか手の出ない靴の店だ。同じような靴がもっと低価格で他の店にも置いてあるのでいろいろ試してみたものの、しっくり来ない。それで一度此処のを試してみようと思ったのだ。ま、単なる好奇心と思うと丁度よい。広い店内には客ひとり居なかった。この不景気だ、仕方あるまい。それにしても店員の丁重なこと。靴の形の美しいこと。素材の良いこと。私は気に入った靴を試した。一足づつ職人が作っていると聞いたが・・・とても軽くて足にぴたりときた。素晴らしい。脱帽だった。何故なら私は今の今まで、此処の靴はブランド名がひとり歩きした鼻持ちならぬ靴と思い込んでいたからだ。値段は決して私向きではない、しかしあの履き心地ならば無駄遣いにはならないだろう。私は親切にしてくれた店員にまた来るからと挨拶をして店を出た。あの靴の履き心地。暫く忘れられそうに無い。風薫る5月。久しぶりに良いものを見つけてご機嫌だ。


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コメント

yspringmindさん、こんにちは。
良い靴を見つけられたそうで、よかったですね。私は靴にはそれほど興味が無くて、日本で買った物を直しては直してはで、長く使っています。服にしても同様で、平気で15年以上使っている物もあります。ひっくり返るほど高い高いものではないですよ!靴は服屋専門のメーカーが出している靴なんですけど、やはり、Made in Italyなんです。買った当時はOLとして働いていたので自分へのご褒美といって買っていました。でも、こちらに来てから靴は買ったことが無いです。冬用の長靴は買ったかな...
今日のお写真の左側の方、見たことありますよ!Via Zamboni でしょうか。

2012/05/06 (Sun) 10:58 | TSUBOI #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

TSUBOIさん、こんにちは。私は子供の頃からの靴好きで、しかもよく歩くときているから足にぴたりとくる靴を見つけると、大変な発見をしたような気分になるのです。この靴屋は有名ですから昔から知っていましたが一度も試してみたいと思わなかったんですよ。不思議ですねえ。何でも偏見や先入観はいけないと学んだ次第です。フランスの靴も好きですが、イタリアの靴はなかなか宜しいです。ところで正解です。写真はVia Zamboniですよ。めったに歩かないのでたまに歩くととても新鮮に感じます。

2012/05/06 (Sun) 18:05 | yspringmind #- | URL | 編集

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