赤い自転車

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此処連日の天気予報ではこんなことを言っている。4月25日か26日から本当の春がやってくると。そうか、本当の春か。ここ数日の冬の終わりのような寒さに肩をつぼめて外を歩いている私は単純に喜ぶ。しかし其れにしては遅すぎやしないか、それに3月後半のあの暖かさは何だったのかと疑問が浮かないでもないが、この際そういうことには目を瞑って本当の春の到来を待とうではないか。後は天気予報が的中するのを願うばかりだ。先日ボローニャ旧市街を歩いていたら赤い自転車を見かけた。それは良く見ると古いタイプで、しかし大切に使われているのがよく分かった。もともと赤い自転車だ。路肩に立つ鉄柱に括りつけられた自転車が誰か知らない人に持っていかれませんようにと思いながら横を通り過ぎた。私がフィレンツェの職場にに通っていた頃のことだ。仕事を終えて同僚と歩いていた。いつもなら彼女は自転車でぴゅーっと友人との待ち合わせ場所に走っていくのだが、その日は歩きだった。いや、正確には2、3日続けて歩きだった。自転車を盗まれてしまったからだ。重い鎖をぐるぐる巻いて頑丈な鍵をつけて駐輪場に留めておいたのに、戻ってきたら無くなっていた。フィレンツェでは良くあることらしかった。彼女の友人は既に5台も盗まれたらしく、それが悩みの種だった。フィレンツェの街に暮らす人にとって自転車は大変便利なものだった。勿論ボローニャに暮らす人にとってもそうだけど、フィレンツェでは格段に便利な足なのだ。彼女はは自転車にすれ違うたびにハッと振り向いた。ああ、私の自転車は一体何処へ行ってしまったのだろう、と何度も嘆いた。と、彼女が大きな声で言った。あの自転車! ペンキが塗ってあるけれどあれは絶対に私の自転車! 成る程良く見ると黄色く塗られているが確かにあれは彼女のに違いなかった。しかも塗ったばかりの黄色いペンキがますます怪しい。しかし私たちの足はすくんで自転車を追いかけることが出来なかった。彼女は自転車が遠のいていくのを悔しそうに眺めながら、追いかけることの出来ない自分自身を更に悔しく思った。それ以来、ボローニャ旧市街の散策中に路上にとめてある自転車が気になって仕方がない。頑丈な鍵はついているだろうか、ぐるぐるとチェーンは巻いてあるだろうか。時々新品の自転車が無邪気に店の前に留めてあったりするとびっくりする。鍵も何もない。店の中を見ると無邪気な顔した奥さんが肉屋に柔らかいところを頂戴ねなどと頼んでいて、私は驚いてしまうのだ。勿論余計なお世話と言うものだけど、気になって仕方がない。此処に昔の同僚が居合わせたら、きっと大きな声で言っただろう。ああ、奥さん。自転車のことは心配ではないの? 自転車もって行かれてしまうわよ。フィレンツェだったら、あっという間なんだから。


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