姉と私

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雪で今日も家のなか。話によると日本海側ではメートル単位の大積雪だそうだから、ボローニャ辺りで50cm雪が積もったくらいで騒ぐのは可笑しいかもしれない。しかしこの辺りでは50cmも積もれば大変なことで、交通機関は麻痺。学校は土曜日まで休校。店も急遽閉めるくらいで、今日は私の職場も休みになった。今日こそはと張り切って早起きして身支度までしていたので、会社が休みと知って嬉しいような残念なような微妙な心境であったけど、地道に降り続く雪を眺めているうちにこれでよかったのだと思い始めた。こんな日は無理して出掛けないほうがよい。折角だからと後回しにして溜め込んでいたことに手をつけることにした。後回しにしがちなものとは大抵面倒臭いものなのだ。実際まったく面倒臭い作業であったが2時間もするとそれも片付いた。と、本棚の端っこに見つけた箱を引っ張り出した。何だろう、と思いながら。箱の中には地図が幾枚も入っていて、そのひとつが鎌倉だった。昨夏、姉と一緒に行った際に入手した手書きプリントの地図だった。あの日は特に暑くて、姉の勧めで栄養剤を飲んで出掛けたほどしんどい暑さの日だった。ほどよい冷房が効いた電車を北鎌倉駅で降りた。小さな駅だったけど随分の人が一緒に下車した。殆どが外国人だった。日本人はこんな暑い時期に鎌倉散策をしないのかもしれないと姉と小声で話したのを覚えている。長く帰省していなかった私は、帰ったときには必ず鎌倉へとずっと胸に抱いていたから、姉が鎌倉へ行くことに同意してくれたのを私はとても喜んでいた。私は姉と昔のようにふたりでどこかへ行きたいと思っていたからだ。私は昔から姉が好きだった。何でも出来る姉。優秀で皆から信頼を集める自慢の姉だった。姉からすれば私は泣き虫の味噌っかすの手間の掛かる妹だったに違いないが、私たちはふたりで色んなところへ足を延ばした。電車を幾つも乗り継いでおばの家に泊まりに行ったり、山のキャンプに姉と一緒に参加したり。大人になってからは週末になると銀座へ行った。映画を見に行ったこともある。姉がどう感じていたかはともかくとして、そうと決まると私は嬉しくて前の晩になかなか寝付けなかったものである。それで鎌倉散策だが、酷く暑かった。蝉が恐ろしいほど鳴いていて、まるで私たちがまだ小さな子供だった頃の夏休みのようだった。あの頃も酷く蝉が鳴いていて、私は嫌いな昼寝をしている振りをしながら網戸の外で鳴き狂う蝉の声を聞いていたのだ。駅から直ぐそこにあった寺に吸い込まれるように入っていったのは、木々が鬱蒼と茂っていて木陰が涼しそうだったからだ。しかし寺の入り口に入るまでには長い階段が続いていて、てっぺんに辿り着くまでに私は半日分ほどの汗を流さねばならなかった。しかしなんて素敵なんだろう。こんな緑色はイタリアの何処を探してもないと思った。たぶん気温とか湿度とか、日差しの強さとか、日本だけが生み出す緑に違いなかった。私が異常に喜んだので、こんな暑い日だけど来た甲斐があったと姉も喜んだ。私たちはぐるりと見て回った後に敷地内のさらに小高い場所に設けられた茶屋へ行った。風通しのよい場所で、向こうの丘を望むことが出来た。私たちはそこで飛び切り美味しい冷たい菓子を頂いて、また階段を下り、鎌倉散策を続けた。そんなことを思い出して急にあの夏の日が恋しくなった。あの暑さでさえも。それで姉にメールを書いた。ボローニャが大雪であること、金曜日辺りには氷点下13度になりそうなこと、今となっては暑くて参った鎌倉散策が恋しくてならないこと。そると直ぐに姉から返事が来た。“階段を上り詰めたところのあの茶屋で私たちは冷たいものを頂いたけど、今の時期はあべかわもちが美味しいらしいです。また一緒に行きましょう。” きっと姉もまた同じなのだ。昔みたいにふたりでどこかへ行く事に関して。嬉しかった。
雪はまだまだ降り続く。ボローニャに暮らして17回目の冬。一番の大雪だ。


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コメント

こんにちは。
私もボローニャに初めて行ったときに目にした、周辺の色が、明らかに日本と違うので、驚きました。
同じ黄色や緑でも、鮮やかだったり、くすんでいたり。
人の違いよりも、色の違いが最初でした。
その土地の色があるものですね。

2012/02/03 (Fri) 04:04 | Via Valdossola #P6wRKz4w | URL | 編集

「17年で一番の大雪」ってことは。ホントにもう、すごいんですよね・・・

自分のいるとこがどーしても基準になってしまって、
「マイナス10℃、20℃で、何をみんな、大騒ぎしてんねん!」って想ってしまいます。

でも、そら・・・〝九州積雪50cm〟ってなったらびっくりしますね・・

2012/02/03 (Fri) 17:58 | ханяма #HluRGzqc | URL | 編集
Re: タイトルなし

Via Valdossolaさん、こんにちは。ボローニャに来た時に色の違いに気が付きましたか。それは興味深いですね。そういうのに直ぐに気が付く人は沢山居そうで案外少ないものなのですよ。ボローニャ郊外の緑も美しいですが、私は昨夏久しぶりに帰省した日本で見たみずみずしい緑に心を打たれました。こんな美しい緑色が日本に存在していたことに今頃気が付くなんて。2年後にまた帰省しますが今からその美しい緑色がとても楽しみなのです。

2012/02/03 (Fri) 23:53 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

ханямаさん、こんにちは。そうですねえ、ロシアを基準にしたらこのくらいの寒さって思いますよね。でもね、イタリアは一応南欧と呼ばれている国でして、国の人々も一応太陽の国とか自覚している訳なので、この寒さは異常なのです。九州でなくたって、東京でだって50cmは結構凄いと思うんですが、いかがでしょうか。兎に角私は寒いのが大の苦手なので辛い2月になりそうです。

2012/02/03 (Fri) 23:58 | yspringmind #- | URL | 編集

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