雨の日

Immagine 038 (Small)


眠っているうちに雨が降ったらしく、朝目を覚まして窓の外を覗いてみたら路面がしたたかに濡れていた。空はまだ暗く、橙色の灯りが濡れた路面に反射してまるで夜のような錯覚に陥った。久し振りの雨だったから、雨が苦手の私ですら恵みの雨に感じられた。最近少々乾燥気味だったのだ。このお湿りで山や丘、そして平地の畑や林も息を吹き返しているに違いない。数日前、エノテカ・イタリアーナに立ち寄った。この店に行くのは久し振りで、多分夏以来だった。私はあの夏の日、店の人に勧められた冷えたランブルスコを頂いて、汗がすっかり引いたとご機嫌だった。さて、店の中に足を踏み込んで驚いた。いったい何時改装工事をしたのか、随分広々している。店の中にある沢山のワイン棚の配置を換えただけではないようだった。何となく、こう、面積が広くなったようだった。今までは直ぐに一杯になってしまった店内だが、今度は二倍の人が入っても余裕があるところを見ると店の面積を広げたに違いなかった。店の人に聞いてみたら案の定店を拡大したそうで、中で働く人も増えて何となく活気付いていた。赤のメルロを注文した。深くて柔らかくて好きなタイプだ。アメリカに居た頃は何時もそれを好んで飲んでいた。これを注文すれば外れることがなかったからだ。それからパニーノを注文した。パンチェッタと・・・とガラスケースの中を目で追っていたら店の人に先を越された。パンチェッタときたら勿論バルサミコ酢だねえ。実を言えば私は何か別のものを挟みたかったのだが、店の人の薦めに従って、それを試してみることにした。トスカーナのパンに薄―くスライスした幾枚ものパンチェッタ、其の上によく熟された上等のバルサミコ酢がたらりと零れていた。口に含んでみたら驚くほど美味しくて、おじさん、凄く美味しい、と言いながらあっという間に平らげた。ワインを楽しんでいる暇も無かったくらい、一瞬のことであった。それでもうひとつ注文した。今度出てきたのは先ほどの二倍もの大きさで、今度はワインと共に楽しんだ。この店には椅子が数個しかないので殆どの客が立ったままのワインと軽食。立派な紳士が美しいつやの毛皮のコートを纏った美しいご婦人を伴って、やはり彼らも立ったままの軽食。此処の客は皆そんなことすらも楽しいらしく、飽きずに毎週のように足を運ぶ。先ほどの立派な紳士と美しいご婦人が連れている黒い犬が私のほうをしきりに眺めていた。私のことが気に入ったのかと思ったが、どうやら私の手元にあるパニーノに関心があるようだった。それに紳士が気がついて、こっちのも美味しいんだよと言いながら自分の皿から一枚のパンチェッタをつまみあげると犬に分け与えた。犬も美味しいものが分かるらしく、それをぺろりと平らげるともう少し、と飼い主にねだった。決して安くは無いと思うが、この店で頂くものに外れは無い。今度は誰か誘って来ようかと思うけど、何しろ立ちながらなので長長居が出来ないのが玉に瑕、なのである。まあ、店のほうとしてはそれで丁度良いのかもしれないけれど。
雨は止んだが気のせいかじめじめして肌寒い。こんな晩は赤ワインが良いだろう。赤ワインに熟したチーズ。冬ならではのご馳走だ。


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