ふたり

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心待ちにしていた週末。特に何の予定があるでもなかったけれど、兎に角神経の疲れる一週間だったから週末の歓びはいつもの倍だ。空は晴れ。朝から暑くなる気配一杯の土曜日だ。暑くなる前にと急いで仕度して外に出た。旧市街へ行こう。ボローニャ旧市街は賑わっていた。旧市街の中心に在るPiazza maggiore は植物でぐるりと周囲を覆われていた。何だろう。そうして覗き込んで思い出した。そうだ、今夜は広場で夕食があるのだった。これはボローニャ市か何かが主催の、広場で夕食を楽しむ催しだ。随分前から新聞の中ほどに予約と問合せ先が載っていたのだ。なかなか面白そうなのでぜひ参加してみたいと思ったが、残念ながら相棒はこういうことに関心がない。それで言い出せずにいるうちに当日になってしまった。広場には白いテーブルが幾つも並べられていた。今日は天気が良いから、美しい晩になるだろう。限りなく満月に近い真珠のように輝く月を眺めながらの夕食は良い思い出になるに違いない。そんなことを考えながら、あの時言い出せなかったことを残念に思った。それにしても暑い。私はまた歩き始めた。少し行ったところにある角のジェラート屋さん。此処は高いが美味しくて大好きだ。それにしても混んでいる。最近いつもこんな風だ。と、中を覗いたらカウンターの奥にいたいつもの女の子と目が合って足を止めた。彼女はひょいと片手を上げると私に向ってVサインをして見せた。何だろう。ああ、分かった。ふたりってことだ。それで私は彼女に笑顔を返した。数日前のことだ。仕事帰りにこの店に立ち寄った。ジェラートを注文して店内の隅っこに立って食べているうちに、店は急に混んできた。客人達を目で数えてみたら20人だった。20人の客に店員はひとり。当然のことながら店員は猫の手も借りたいくらいの忙しさだった。私が店を出る頃にはまずます混み合い、彼女の夕方は前途多難だった。翌日の夕方、また店に立ち寄った。店の彼女はひとりだった。しかし客は私ひとり。私は注文したジェラートを受け取りながら彼女に話しかけた。あなたはいつもひとりなの? 昨日の夕方は大変だったでしょう? 20人ものお客さんをひとりでこなすっていうのは。すると彼女は昨日のことを思い出して、最近はいつもひとりであること、そういう日に限って忙しいこと、今日もひとりであることを、まるでずっと誰かに聞いて貰いたかったように、早口で語った。今日は忙しくないといいけれど・・・とふたりで話しているうちに店内はまた急に混み始めた。やれやれ。私達は顔を見合わせてそれぞれの場所に戻った。つまり彼女は客人の注文を訊きに、私は店内の隅っこに。だから彼女はVサインを見せたのだ。今日は大丈夫。だってふたりなんだから、と。店内は相変わらず混んでいて、更に混み合った店内を見た人達が魔法にかけられたように店に吸い込まれていく。今日はふたりでも大忙し。3人居なくては間に合いそうにない。そんなことを思いながら、彼女にまた来るからと合図して、再び歩き出した。


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