あの日のこと

Immagine 039 (Small)


夕方、仕事帰りにボローニャ旧市街に立ち寄った。昼間の暑さもこの時間になると弱まるもので、快適な風が吹いていた。街角で気温を確認したら31度だった。少し前に比べたら格段に過ごしやすく、頬や髪を撫でる風の中をすいすいと歩いて気分がよかった。どうやら周囲の人にとってもそうらしい。日陰のカフェに佇む人は少なく、その代わりにポルティコや広場を闊歩する人を沢山見掛けた。街に元気が戻ってきた、そんな言葉がぴったりの夕方だった。Piazza Maggiore を歩いていたら聞きなれた発音の英語が聞えてきた。振り向いたら背後に数人の男女がいて、旅行者らしかった。多分私がその昔暮していた町辺りから来た人達に違いなかった。そうしているうちに聞き覚えのある町の名前が話しに出てきて、ふと昔に引き戻された。私がアメリカに暮らし始めて1年が経ち、仕事を始めて何ヶ月かが過ぎた頃だ。涼しい8月が終って暑い9月も終わり10月が始まった頃だったと思う。その日は仕事が休みと知った友人が近郊の町に行くので一緒に来ないかと誘ってくれた。まだ足を延ばしたことのないその町に興味を持った私は友人と共にバスに乗った。町の中心を南北に走る大通りを北上し、大きな橋を渡たるとバスは別の郡に入っていった。ひとつ、ふたつ見慣れた町を通過して更に暫く走るとその町に着いた。人に聞いて想像していたよりもずっと感じの良い町で、バスを降りると小さな広場、そして広場に面したところには活気のある、感じの良いカフェがあった。バスに乗るために時間つぶしをする人達、バスを降りてほっと一息つく人達、それからこの町の住人達が気軽に通うカフェらしかった。健康的で気さく。そんな言葉がぴったりだった。友人と私は此処から別のバスに乗る予定だった。時間が沢山余っていた訳ではなかったのにこのカフェに入ったのは、そんな人達が集うこのカフェの雰囲気が気に入ったからだった。さて私達はバスに乗って住宅街に入っていった。住宅街と言っても家が連立している訳ではなくて、メインストリートと呼ばれる通りに面して一軒、そして少し行くと一軒存在するという具合だった。ああ、此処此処、と友人が下車の合図をして私達はバスを降りた。バス停から数分歩くと友人のそのまた友人が暮している家があった。大きな家。広い庭。楓によく似た樹が周囲を覆っていた。色づいた葉が地面に落ちてまるでオレンジ色のカーペットのようであった。家には沢山の人達が既に集まっていて、皆顔見知りのようだった。たまたま着いてきた私は一瞬居心地の悪い気分になりかけたが、それは全く一瞬だった。良い人達の集まりだった。彼らは早めに来て広々としたキッチンで料理をしていたらしく、既にいい匂いがした。皆でテーブルをセッティングして大人数での昼食となった。何を話したのかは覚えていない。昼食が何だったかも覚えていない。でも私達は長い時間話をしながら昼食を楽しんで、帰る際にとても楽しかったこと、来て本当に良かったと思ったことを彼らに述べたら、わあっと喜んでくれて、確か皆が次々と肩を抱いて挨拶してくれた、それだけはよく覚えている。帰りのバスの中で私達は疲れてぐっすり眠った。というのも私達は彼らと別れてから近くの岩場を2時間ほど歩いたからだ、食後の運動などと言って。あの日のことを未だによく覚えていると友人が知ったら何と言うだろう。それとも案外友人も覚えていて、あの日は確かに楽しかったねと私に同感してくれるのかもしれない。


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