涼を求めて

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昨日、相棒とボローニャを脱出した。涼しさを求めてモデナ県の山、Monte Cimoneを目指した。ピアノーロから少し南下した辺りで西へと車を走らせるとそのうち標高がぐんぐん上がっていく。私達が目指すMonte Cimoneは標高2165m。勿論頂上まで行く予定は無く、途中の村に立ち寄りながら散策、カッフェそして昼食を楽しもうというプランである。どちらにしても標高が高いので涼しいこと間違いなし。途中Fananoに立ち寄った。此処はこの辺りでは大きい町で旧市街は小さくも歴史がぎっしり詰まっているのだそうだ。標高は600メートル以上。ところがである。街中の温度計は36度を表示している。実際大変な暑さで、歴史的なものを探す間もなくカフェに飛び込まねばならなかった。冷たいものを飲み干して気分がさっぱりすると古い店であることに気がついた。聞いてみるとこの店は昔はオステリアだったそうで、建物は1800年代のものらしい。壁に貼られたタイルは昔のままで、壁にはその当時の写真が飾ってあった。私達は再び車に乗って更に山を登っていった。そろそろお腹が空いた頃で、しかし山は大自然が横たわるばかりで店など無い。ああ、何処まで行けば良いのだろうと思い始めた頃、聞いたこともない村に到着した。村の入り口に美味いポルチーニ茸の料理が食べられる村と書かれていた。ここを逃す手はない。何しろ好物のポルチーニだ。村にレストランは4軒あった。こんな小さな村に4軒とは。さて、何処に入ろうか。村の入り口に書かれていた美味しいポルチーニ茸の料理はどの店で頂けるのだろう。私達は4軒の店の前を何度も往復して大通りに面していない店に入ることに決めた。Da Maria、つまりマリアの店。店が奥まった所に在ること、店の名前が素朴なことから私達は小さな家庭的な美味い料理に店と判断したのである。店は洒落ていなかったが中に入ると随分と広く、そして店の人に予約はしてあるのかと訊かれた。勿論予約はしていなかったが、空いているテーブルに気持ちよく通してくれた。背後の大窓の外には山の風景が広がっていた。標高900メートルもあるのに期待していたような涼しさは何処にも無いが、窓から流れ込む風は充分気持ちが良くて此処に来てよかったと思った。さてこれからが驚きであった。メニューが無い。メニューは店の人が口頭で教えてくれる。種類は豊富で魅力的、しかし値段は全く不明。どうやら高い店のようだ。そういう店に入ってしまったことを一瞬後悔したけれど、私達は財布の心配をするのは辞めて腹をくくって注文することにした。今日は美味しいポルチーニ料理をしっかり頂くのだから、と。店の人は食べ終わるたびにテーブルに来て、さあ、次は何にしましょうか、と注文をとる。店の内装に似合わない上等な対応、それにしても美味しい料理。窓から流れ込む山の空気と美味しい料理に気を良くして私達のお喋りが弾んでくると、向こうのテーブルの人達が話しかけてきた。実を言えば先ほどから気になっていたのだ、この人達が。80歳前の老夫婦と思われるが、姿勢がよく身だしなみがきちんとしていて気持ちが良い。時々聞えてくる男性の話し声から知識人であることが窺われ、女性のしぐさや話し方、髪の結い方や身なりから高貴なご婦人なのではないかと想像された。身につけている宝石は結婚指輪、そしてシンプルなパールのネックレスだけ。それが尚更品良く見えた。さて、ふたりは私達に注文のコツを教えたかったらしい。兎に角良く知っているのだ、この店のことを。聞いてみれば彼らはモデナ県のVignola から毎週末この店に昼食を楽しみに来るのだという。彼らはこの辺りの山の村が好きで、車で来ては散歩をしてこの店で昼食を頂くのが習慣なのだそうだ。色んな店を試してみたがこの店に勝るものはない。何しろ78歳のマリアが料理しているのだから。今日は空いているけれど通常は予約無しでは席が無いとのことであった。私達は一瞬のうちに彼らを好きになり、テーブルこそ離れているが一緒に食事を楽しむことになった。彼らは歴史や骨董品、そして芸術を好む人達だった。相棒がそういう仕事に携わる人だと知ると話は盛り上がる一方だった。彼らのお勧めはどれも美味しく、確かにどれもあっという間に消化してしまう魔法の料理だった。こんなに沢山頂いたがお腹は丁度いい具合である。さていったいお幾らなのかと思えば、毎週来る得意客と仲良く話をしていたからなのか、50ユーロ。私達が想像していた半分以下であった。随分割引してくれたらしい。店を出てから私達は先程の彼らと村の教会を一緒に見て歩き、日陰に椅子を並べてひとしきり話をした。私達は名前も電話番号も交換しなかったが、週末の昼時に来れば必ず会えるからと彼女はよく手入れされた美しい右手を差し伸べて握手しながらそう言った。多分またあの店で会えるね、と私達は帰りの道のりで何度もそう話した。思ったような山の涼しさは得られなかったが、気持ちの良い1日となった。そして素敵な夏休みの締めくくりであった。
気持ちの良い1日と夜中の夜風。一夜空けるとうだるような日曜日が待っていた。話によると昨日よりも今日、今日よりも明日が暑いらしい。明日からは早起きといつもの生活。夏休みが終わってしまうのは残念だけど良い休みだったと満足だ。そして暑くて身体はぐったりだけど、気持ちはとても清々しい。


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コメント

モンテプルチアーノへ行く途中に一晩ボローニャの近く(Monteveglio)でストップするのですがこの時期にボローニャを訪れたら素敵でしょうね。今回は残念ながら通過しそうです。道中ポルチーニなど旬なものに出会う楽しみがあります。Fananoはボローニャから遠いでしょうか。気になるところです。

2011/09/25 (Sun) 16:25 | basilea #V1zXMXvE | URL | 編集
Re: タイトルなし

basileaさん、こんにちは。今の季節のボローニャは素敵です。立ち寄って頂きたいけど、今回は仕方がありませんね。Fananoはボローニャから決して近くはありません。しかしMonteveglioに泊まるのであれば、あの辺りでもポルチーニなどの旬の美味しいものが頂ける筈ですよ。郊外の町のレストラン、掘り出し物が沢山ありますからお楽しみに。美味しいワインも一緒にどうぞ。そして次回こそボローニャにお立ち寄りくださいね。

2011/09/25 (Sun) 22:40 | yspringmind #- | URL | 編集

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