Cinquecento

Immagine 070 (Small)


私にもとうとうその時がやって来たのだ、と此処数ヶ月の間に何度呟いたことだろう。それは滞在許可書の更新だ。滞在許可書と言っても様々な種類があるらしく、私のは俗に言う永住権。今時のそれのようにプラスチックのカードではない。A4 サイズの薄い紙っきれだ。10年ごとに更新すること、と紙の一番下に小さな字で記載されている。パスポートの間に挟めるように小さく折りたたんで旅行時に携帯するものだから、しかも何度も開いては折りたたむものだから折り目はすっかり擦り切れて、急いで開こうものならばぴりりと裂けてしまいそうだ。あれから10年が経ち、更新の日が近づいている。はーっと深い溜息が思わず出てしまうほど面倒臭くて重荷である。多分これを乗り越えれば今の憂鬱な気分もあははと笑い飛ばして酒のつまみのひとつにもなるのだろうけれど。
兎に角そんな溜息をつきながら歩いていたらFIAT の白いチンクエチェントを見かけた。近年新しいバージョンで再登場して話題になったが、私はやはり60年代の古い型が好きだ。同じ古いにも製造年によって違う。例えばドアの開き方、例えば内部の座席の風情。失礼かと思いながらも良い状態で保っているのを見掛けると、立ち止まって観察せずにはいられない。そういえばこんな事があった。何時も行くバールの近くにベージュ色のチンクエチェントが停めてあった。小さくて中に大人がふたり座ったら車内はぎっしりになるに違いなかった。細身のハンドル、磨きこまれた黒革の座席。古いながらもワックスで磨かれているらしくピカピカだった。粋だなあ、と呟いたところで持ち主が背後からやって来た。いいですね。素敵ですね。それにしても手入れされていますね、ピカピカではないですか。持ち主にそう話しかけると、ひとことも発さずに、しかし嬉しそうな顔で大きく縦に首を振った。持ち主はこの車よりも更に年上の白髪の男性だった。白いカッターシャツに朱色のパンツ、素足にモカシンシューズを履いた、シンプルで粋な装いだった。若かった頃、沢山の女の子達が彼を追い掛け回したに違いなかった。彼は車に乗り込むとエンジンをかけ、まだ其処に立っていた私に片手をちょっと上げて挨拶すると雑踏の中に消えていった。実にイタリアらしい瞬間であった。何時だったか、私もこの車を欲しいと誰かに言ったところ運転はなかなか複雑で難しいとのことだった。でも後で分かったのだけど、それは少なくともいつまで経っても運転に向上が見られない私のような人には、と言うことらしい。


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コメント

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2011/08/01 (Mon) 14:27 | # | | 編集
Re: タイトルなし

鍵コメさん、こんにちは。滞在許可証を更新するのは10年ぶりで、しかもシステムが随分変ってしまったので全く参っているのですよ。郵便局でキットを入手しましたが、CISL に行って相談してみたら私のケースは郵便局ではなくて直接クエストゥーラへ行くそうです。そいうことで来週は朝の5時頃に行って番号をとらなくてはいけないんですよ。でも、これが済めばまた10年安泰ですからね! 多分鍵コメさんも次回は同じような手続きになることでしょう。そのときはCISL に行って相談することをお勧めします。
それにしてもイタリアの初老の男性はお洒落ですよね。オレンジ色のパンツや薄いピンク色シャツをさらりと着こなすんですから! それはお手本にしたいものですね。

2011/08/14 (Sun) 12:21 | yspringmind #- | URL | 編集

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