好天気

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何時まで続く、この好天気。今日は長袖のコットンセーターを着て出掛けたら、案の定午後には暑くて仕方無くなった。失敗した。週明けの月曜日はいつだってブルー。でも今週は違う。金曜日はボローニャの祝日だからね、と笑みを湛える知人達。明日の朝は10月。9月が綺麗に終わったから、良い10月になりそうな予感がする。うん、良い10月にしよう。




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サン・ルイ島が呼んでいる

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クローゼットの中を整理している。古くなったもの、もう着ることがないに違いないもの、小さくなったものはリサイクルに出してしまおうと思って。どれも随分着こんだものばかり。だから余り悔いはない。必要な人が着るならば、それはそれでよいだろう。そんなことを考えていたら、吉報が舞い込んだ。不要なウールやカシミアのニットを店に持ち込めば、30ユーロ程のクレジットを貰えるという話。その店でニットを新調する時にクレジット分を割り引いて貰えるという仕組みだそうだ。上手い商売をしていると思うが、こちらにしてもリサイクルに出してしまおうと思っていたものなのだ。と言うことで、ニットの幾つかはこの店に持ち込んでみようと思っている。

パリへ行ったのは4年前の秋のことだった。飛行機に乗れば僅か一時間と近いくせに、随分と長いことその夢を温めてしまった。それが実に私らしいと、思いだす都度笑いが零れる。初めてのフランス。初めてのパリだった。長く温めた夢、しかし重くて上がらない私の腰を上げさせた、その火付け役となったのはボローニャ旧市街のフランス屋と私が勝手に呼んでいる店の夫婦だが、そんなことだとは彼らは露にも思っていないだろう。いつの頃からかボローニャくらいの街が丁度良いと思うようになった私には、パリはとんでもなく広い、手に負えない街に思えて、それが私を躊躇させていたのだろう。あれから4年が経ち、その間に一度も再訪しようと思わなかったといえば嘘になる。ただ、あまりの広さが私には、ほんの少しだけ心の負担になっていて、計画を立てようとしては止めてしまうのだ。ところがこのところ夢に出てくる。パリと言うよりは、サン・ルイ島の小路の様子が。其れも昼間の旅行者の多い時間帯の様子ではなくて、朝早くの、店がまだ開かない時間帯の静かな街の様子、そして空がすっかり暗くなってひと気が無くなった頃の様子だ。私がサン・ルイ島にアパートメントを借りたのは単なる偶然だったし、そもそもそれまでサンルイ島について考えたことも無かったのだが、空港から列車と地下鉄を乗り継ぎ、セーヌ川に架かる橋を渡ってサン・ルイ島に辿り着くと、とても初めて来た気のしない、まるで昔から知っている場所のように思えた。それでいて新鮮で、私の感性を刺激した。フランス屋の夫婦がサン・ルイ島にアパートメントを借りたことにしたことを知ると、随分良いところに決めたねと驚いた、その意味が其処に行くまで意味が分からなかったけれど、確かにあの場所は良かった。初めてのパリが良い印象になったのも、サン・ルイ島のおかげなのかもしれない。兎に角河の真ん中に浮かぶ小さな島だから、過去に幾度となく洪水に見舞われたらしい。路地の角には時々印があって、此処まで水位が上がったことを教えてくれる。ならばこの辺りの建物の地上階は、時々洪水に見舞われては大変なことになっていたに違いない。地上階に暮らすことはつまり、水害に遭うことを覚悟することだったのではあるまいか。私が借りたアパートメントの建物の入り口も、そうした水害を体験したのだろう。不動産価格、家賃の高さで有名だと言う此処にしては質素な入り口とその内側だったが、過去のことを考えれば当然のことだったのかもしれない。例えば入り口を入ってすぐの壁と床が一面大理石などという素晴らしい建物が他の界隈にはあるけれど、此処では見当違いなのかもしれない。しかし、島の先っぽの方に在る大きな建物がアラブの大金持ちが買い取ったと聞いたから、あの建物はあらゆる贅を尽くした建物に改装されたに違いない。地上階の床も壁も一面大理石になっているだろう。私の部屋は俗に言う屋根裏部屋だった。窓からチラリとみえたセーヌ川。天井には梁が剥き出しになっていて、それが実に欧羅巴らしくて有難かった。いつもは広い部屋のホテルにしか泊まりたがらぬ私を驚かすようなこじんまりした部屋だったが、しかし其れで私を落胆させるようなことは少しもなく、小さなバスルームも、小振りのキッチンスペースも、これがこの街らしいのだろうと思えば有難く、嬉しかった。サン・ルイ島の夢を見て以来、私は考えている。パリを散策しようなどと思うと街の広さに怖気づいて計画倒れになるだろう。ならば、その辺りだけを散歩する小旅行を企ててみよう。小さな鞄で充分な、3日くらいの短い旅行。其れならば近いうちに実現できるに違いないと。ボローニャとは異なる空気を吸いに。ボローニャとは異なる色を求めて。早起きして人の居ない道を歩く喜び。夜の帳が降りて橙色の灯りが道を照らす中を息を潜めて歩く喜び。昼間は、河に沿って歩いてみようか。それとも河べりに腰を下ろして手紙を書くのもよいだろう。

日曜日は駆け足。しかも足が特に速いスプリンターだ。もっとゆっくりしようよ、と声を掛けてみるけれど、スプリンターの耳に届かないらしい。




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さあ、外に出よう

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週末だけど早起きして散策に出掛ける計画は早々に敗れた。目を覚ませば日が既に高く昇り、早くも強い日差しが地面を照らしていた。天気が良い上に気温が上がったので、多くの人達が屋外に居るらしい。周辺の庭から様々な声が聞こえてきた。老人たちのお喋り。親子の楽しそうな声。それから若い女の子たちの甲高い声も。終わったと思っていた夏が思いがけず戻って来たような。此れが10月ならばインディアンサマーなどと呼びたいところだが、9月の暑さの戻りはボローニャ辺りではよくあること。やあ、まだ夏はその辺でぐずぐずしていたんだね、程度のことである。夏ごろからすっかり出掛けるのが億劫になっている私だ。意を決して自分の背中を押さなければ好きな散策に行くのも面倒臭く感じてしまうのが、このところの悩みである。起きるのが遅くなったことを理由にして外に出るのを止そうかと考え始めている自分に向かって声を掛ける。外は良い天気。こんなに楽しそうな空気に満ちているのだから、散策に出掛けないなんて勿体無いでしょう? 

旧市街に着いたのは、もうすぐ正午という時間だった。カフェのテラス席に座る客はまだ疎らで、穏やかな土曜日と言う感じが漂っていた。街を歩く人は多いのは見本市の関係か。それともこの思い掛けに好天気に、誰もが外に出てきたのか。少し歩くと額に汗を掻いた。鞄からハンカチを取り出して汗をぬぐっていたら、やあ、暑いですねえ、と背後から声を掛けられて驚いた。見たことも無い人だった。私が驚いた顔を見せると、あの店で働いているんですよ、と彼は向こうの方を指さして笑った。私がよく行くバールだった。しょっちゅう顔を合わせているのに店の外で普通の格好をしていると、まるで別人、知らない人のように見えるのだから不思議だ。今日は休みなのかと訊くと、これから仕事だと彼は言って笑った。そして今日は忙しくなりそうだと言って空を仰ぐと、手を振って店に向かって歩いて行った。空を仰いだのは、こんな晴天の日は仕事などしたくはないと思ったからだろうか。こんな良い天気の土曜日だ。そう考えたとしても不思議ではない。
街を歩いていると感心することがよくある。同じ女性でも何と様々な人が存在することか。そして彼女たちは洒落のコツをよく知っている。足首を見せて履くパンツに、丈の短いジャケットを合わせて軽快なのは、恐らく60を超えた女性。私ならば躊躇してしまいそうなオレンジ色の上等な革のバックを手に、颯爽と歩く様子には脱帽だ。それから上から下まで黒の女性。でもよく見ると無難なものはひとつもなくて、ジャケットにしても細身のパンツにしても踵の低いショートブーツにしても、彼女の拘りがよく分かる。黒ずくめだが決して重苦しくも暑苦しくもない。丁度良いバランスを知っているのだろう。そして私の目に飛び込んだのが、黒い革のバッグ。このバッグは知っている。店の棚に置かれていたのに惹かれて見せて貰ったのとすっかり同じものだ。パリから仕入れたとのことで、これに目を付けたことを店の人に褒められたものだ。もう10年も前の話で、目抜き通りの小さいが歴史のある店でのことだった。もともとは父親が帽子を作って売っていたが、その父親が他界して以来、娘とその娘が店を引き継いだ。娘と言っても60歳程の年齢で、彼女の娘もとっくに25を過ぎている。帽子はあまり置かなくなり、バッグや靴、衣服といったものをパリへ行って仕入れてくる、いわゆるセレクトショップみたいなものである。柔らかい革で縫い目がとてもきれいで、軽くて、申し分なかったのに買わなかったのは、勿論私には高価なものだったからだ。高級ブランド製品ではない。しかし逸品であることには違いなかった。目の保養になりました、ありがとう、と言って店を後にしたが、暫くの間残念感が残った。そして思うのだ。どんな人の手に渡るのだろうかと。目の前に居る黒ずくめのお洒落な女性がそのバッグを手にしているのを見て、良かったと思った。彼女はこのバッグの価値を、魅力をちゃんと理解しているだろうから。随分と使い込まれていたが手入れをしているらしく、型崩れもなければ光沢も其のままだ。バッグも喜んでいるだろう。さて、私が喜んだのにはもう一つ理由があった。彼女は小さな赤ん坊の母親なのだ。この素晴らしい黒の装いでベビーカーを押している。子供を産んで子育てもする。忙しいだろうに、お洒落心を忘れていない。格好いいなあ。通り過ぎて行った彼女の後姿に暫く釘付けになった。私ばかりでなく、多くの通行人にしても。

よく歩いた。昔はもっと歩いたけれど、今はこれが精一杯。これくらいだって充分疲れて、夕方はソファの上で本を読みながらゴロゴロした。滅多にないことである。猫は驚き、私が病気だと思ったのだろうか、心配して傍を離れない。それとも猫はゴロゴロ仲間が増えて嬉しかったのかもしれない。ゴロゴロ、ゴロゴロ。これ、癖になりそうである。




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今夜はピッツァにしよう

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蒸し暑い一日だった。街を歩く人達の装いはまちまちで、着こんでいる人も居れば半袖シャツを軽快に着て歩く人も居た。私はと言えばそれなりに着こんでいて、終いには額に汗を掻きながら歩いた。街は既に秋物に満ちていると言うのに。ショーウィンドウの秋の衣服を眺めながら、見ているだけで暑さが増すと思ったのは私だけではあるまい。

今夜は何も作る気になれなくて、相棒の提案で持ち帰りピッツァの夕食になった。此れなら後片付けをする必要すらない、と言うのが提案の理由だった。私としては相棒に、魚介のパスタ料理などを作って貰いたかったが、彼にしてもこの蒸し暑さで料理をする気になれなかったのである。うちの近所には大小様々のピッツェリアがある。その数6軒。そのうちで気に入っているのが一番小さい店で、いつの頃からかこの店にしか行かなくなった。今夜は相棒が行くと新顔が働いていた。と、思ったら新顔は相棒に親しげに挨拶をして、更には君の奥さんは元気かいなどと言う。訊けば少し前まで長いことピアノーロの店で働いていて、近所に住んでいた私達を毎日のように見かけたのだそうだ。そうして注文したピッツァを受け取る時に、良く焼いといたよ、君の奥さんはピッツァの焼き具合にはうるさかったからね、と言ったそうだ。これには驚いた。もうかれこれ7年ほど前のことなのに、と私は目を丸くして相棒の顔を覗き込み、相棒は笑いながら頷いた。世間の人はよく見ている。自分が気が付かないだけで、周囲の人達は良く見ているし、よく覚えているものだ。私はと言えばピアノーロでのことは既に遠い昔のことになっていて、思いだすこともあまりない。それは恐らく私にとってピアノーロでの生活は単なる通過地点みたいな存在だったからかもしれない。折角手に入れた家だけど、その間に大好きだった舅が他界したり、冬が寒すぎたり、旧市街から遠すぎたり。色んな理由があるけれど。兎に角、私にとってはそんな遠い昔に思えるようなピアノーロ。その頃の私達をピッツァ職人が覚えていたことに舌を巻いた。そんな彼が焼いたピッツァは確かに焼き加減が抜群で、これに関してもまた舌を巻くことになった。ところで君、彼のことを覚えているかい? と相棒に訊かれて、覚えている筈がある訳ないではないか、と言いかけて、しかし彼は私達を覚えていたと心の中で呟いた。知らない誰かが、忘れている誰かが、自分のことを覚えていてくれるのは案外悪くない。有難いことなのかもしれないと思った。ああ、それにしたって。ならば相棒と私がしょっちゅう喧嘩していたことも覚えているのだろうかと思うと、ほんの少し気が滅入った。

待望の週末。明日は旧市街を散歩しようと思う。足元は軽快にして、軽快な装いで、歩いて歩いて、歩くのだ。日頃の運動不足解消と言うよりは、身体と心の血液循環をよくするために。いつものバールに立ち寄って。時にはショーウィンドウを眺めたりして。




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青い空

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オスロのことを時々思い出す。降ってわいたような小旅行で何の準備もしていなかった。だからなのか、行ったはいいが実感が無くて困った。其れに雨が降っていたし寒かったし、何となく出鼻をくじかれたような気分だった。それが2日も経つと美しい青空が現れた。冷たい空気が空をこのように美しくしているのであるならば、冷たい空気のこの街が好きだと思った。ある日。恐らく日曜日だったのではあるまいか。港からすぐ傍の広場で子供たちが大騒ぎしていた。見れば微妙な装いをした男性が、シャボン玉を作って子供たちを喜ばせていた。シャボン玉の魔術師。子供たちが歓喜を上げる気持ちはよく分かる。私だって本当は、彼らのように大はしゃぎしたいのだから。虹色に光る大きなシャボン玉。空に舞い上がっていく様子が美しかった。あの日のような涼しい季節がボローニャにも遂に到来した。歩いても歩いても汗ばむことの無い季節。だから、オスロのことを思いだすことが多くなったのかもしれない。オスロのことはまだまだ記憶の山に埋もれることはないだろう。




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