長い夕方

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昨夕のこと。仕事を終えて外に出たら、向こうの空がとても黒かった。黒かった、というよりも、黒い雲が空を埋め尽くしていたというのが正しいかもしれない。それでその、向こうの空とはズバリ私が暮らすあたりの空のことで、ああ、予報通りだ、雨が降るのだと思いながらちょうど来たバスに乗り込んだ。バスが家の方向に向かうにつれて急に暗くなり始めた。それは夜がやってくるのとは異なった、今にも大粒の雨が天から落ちてきそうな、いやな予感のする暗さだった。そうしてバスを乗り換えるべく途中で下車すると、ひとつふたつ、と降り落ちてきたのは大粒の氷の塊、雹だった。私は店に飛び込んだ。この冬、二匹のジャガー印のシチリア産オレンジを購入するために足繁く通った店だ。果物でも購入しているうちに雹なんてものは止むに違いない、と思ったからだった。先日の苺が美味しかったからと、苺を山盛り包んでもらった。そして少し店主夫婦と言葉を交わして時間稼ぎもしてみたが、少しも止む気配がない。困っている様子を見た店主が止むまで店に居ればいいと言ってくれたので、好意に甘えることにした。何しろこの店と言ったら本当に狭いので、長居は無用というのが私たち客の暗黙の了解だった。しかし店主が良いというのだから、良いのだろう。結局雹はそのうち大粒の雨に変わり、雷が鳴り響き、30分も降り続けた。世話になったと礼を言ってバスに乗り込んでやっと帰宅した。降るとは知っていたがこんなに酷い降りとはねえ、と猫に話しかけてみるが、猫はまだ鳴りやまぬ雷の音や空の稲光に驚いて、私の話し相手などしている余裕はないらしい。ところがそのうち黒い空に美しい虹が現れた。七色ではなくて濃いピンクと黄色のたった二色の、幅の広い虹。そんな美しい虹は見たことがなく、猫にしても同様らしく、私たちは窓ガラスに張り付いて美しい虹を眺めた。その晩の満月の美しかったこと。真珠色の満月。そういえば久しく月を眺めていなかったと気づき、自分には気持ちに余裕がなかったのだろうかと戸惑った。私たちの周囲には美しいものや心を打たれるようなものが沢山あるはずなのだ。特別なものでなくていい。ほんの身近なもの、ほんの些細なことだって。以前の自分ならば、そうした小さなことに気付いていたに違いないのに。折角の春。もう少し余裕を持ちたいものだと思った、月夜。気が付いたことに感謝した月夜だった。

だからという訳ではないけれど、今日は寄り道を楽しんだ。長い夕方。遅くやってくる夜。ふわふわとした感じの夕方は、幸せすぎて時として怖いくらい。あと数日働いたら、復活祭がやってくる。




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コメント

こんにちは、yspringmindさん。
春が来ましたね。
さくらは終わりました。
葉桜に成り変わっていますよ。
自分をいつも見失いたくないですね。
ほんとに。

2017/04/18 (Tue) 15:01 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。春が来たのにまた冬に逆戻りのボローニャです。昼間も14度しか上がらないし、夕方は7度と寒い寒い。気を付けていたのに風邪をひいてしまったようです。ああ、うっかりでした!桜も藤も終わりましたが、家の周辺は栃ノ木と名前の木の花が満開です。美しい。あとは気温が戻って暖かくなれば文句なしです。自分を見失いためには、ゆっくり、じっくり焦らないこと。そんな風に思っています。

2017/04/18 (Tue) 18:57 | yspringmind #- | URL | 編集

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